プロジェクトのあゆみ

Step4 平成23年度の活動

Step4 平成23年度の活動

 万一の被ばく事故に対応できる医療専門職の人材育成を目指し、独自の取組みを進めていたさ中の平成23年3月11日、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生しました。弘前大学では、“放射線安全機構”の意思決定により、いち早く全学体制で被ばく状況調査チームを編成し、事故発生当初から7月末までの間に、教職員延べ582名を現地に派遣して放射線サーベイを中心とした支援活動に当たりました。


Step4 平成23年度の活動

 派遣チームは、放射線の専門家、放射線技師、看護師または保健師、ロジスティクスとしての事務職員を基本ユニットとして、編成されました。保健学研究科から派遣された教職員は、これまでの被ばく人材育成プロジェクトで培われた成果を発揮し、避難住民の放射線サーベイ活動や一時立ち入りに際しての医療サポートに当たってきました。この支援活動の中で特に象徴的だったことは、看護職の活動でした。単に機械的に放射線サーベイを行なうのではなく、不安な気持ちで測定に訪れた避難住民の気持ちを受け止め、不安を和らげる働きかけが展開されたことでした。白ずくめの防護衣という異様な姿や鈍く光る測定器に怯える子供達にキャンディーを配ったり、サーベイメーターのセンサーにマンガの絵を書いたりといった細やかな気配りは、それまでの研修や教育プログラム構築の過程で培われた成果が結実したものと思われます。これに加えて、弘前から福島までの車の運転から、現地対策本部や大学本部との連絡・報告、スケジュール調整まで、ロジスティクスとしての役割を担った事務職員の存在も、チームには欠かすことの出来ない存在でした。


Step4 平成23年度の活動

こうした福島での支援活動成果について、平成23年11月、前年度に看護系教員を派遣したUCSFのミランダ・クレイマー女史から同校での特別セミナーとアメリカ腫瘍看護学会第12回学習会(ソルトレイクシティ)での講演の機会が与えられ、野戸・北宮両准教授の海外での講演が実現しました。この講演の反響は大きく、本プロジェクトと福島原発事故への支援活動の取り組みと看護職の役割について国際的に発信する機会として、収穫の大きいものでした。
 このように国内外の研修を通して、放射線の基礎から被ばく医療最前線までの知識・技術を学ぶことから始められた取り組みも、「受け身」の姿から「発信する」立場へと大きな転換を果たすことができました。


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