プロジェクトのあゆみ

Step1 平成20年度の活動

Step1 平成20年度の活動

 このプロジェクトの目的は、緊急被ばく事故への対応策の一つとしてバックアップ体制を確立し、高度医療専門職の教育や、現職者に対するシミュレーション訓練を通して、緊急被ばく医療の基盤体制の整備を図ることにあります。プロジェクトを進めるに当たっては、日本原燃、放射線医学総合研究所をはじめとする関連機関との連携協力が不可欠であったが、包括協定の締結を通して視察・研修計画の実施など全面的な支援を得ることができました。また、広島大学、長崎大学に出向いて本プロジェクトについて説明し、助言を頂くとともに支援について快諾を頂きました。さらに、学外の専門家に対して助言・指導と外部評価を委嘱するなど、より適切なプロジェクトの展開が目指されました。


Step1 平成20年度の活動

 初年度の取り組みの最大の目標は、我が国における緊急被ばく医療の現状について多方面から情報を収集するとともに、関連施設の視察・見学・研修を通して、大目標である緊急被ばく医療を担う人材の育成に必要な要件と課題を明らかにすることにありました。この目標の達成に向けて、必ずしもこの領域に明るくない大多数の研究科教員が、まず緊急被ばく医療の現状を知り、放射線・放射線障害・放射線防護の実際について学習し体験することから取り組みが開始されました。教員研修の柱となったのは、放射線医学総合研究所の全面的な協力の下、平成20年度から、年1回、3年にわたって開催された「弘前大学被ばく医療セミナー」でした。このセミナーに全教員のほぼ9割が、専門分野を問わず、放射線医学総合研究所まで出向き、講義と演習からなる3日間の研修を受講しました。この他、原子力安全技術協会の実施する原子力防災研修をはじめとして、国内で開催される各種の関連研修に積極的に参加するとともに、青森県内の原子力関連施設の視察研修も精力的に展開いたしました。また、この分野における海外での人材育成状況の把握と連携構築を目的として、米国のオークリッジ科学教育研究所緊急被ばく医療支援センター/研修施設(ORISE, REAC/TS)での研修・視察も実施されました。


Step1 平成20年度の活動

 一方、学部と大学院の教育に被ばく医療に関する授業を盛り込むため、教育カリキュラムの検討も開始されました。まず「育成する人材像」を明確にする作業が行なわれた結果、学士課程教育、大学院教育、現職者教育それぞれの基本コンセプトがまとめられ、大学院博士前期課程での教育を中心とした“被ばく医療を担う医療専門職の教育システム”の全体像が概念化されました。また、人材育成の基盤としての研究については、放射線の人体組織や細胞、染色体に及ぼす影響評価とその障害軽減など、放射線生物学を中心とした医療生命科学領域の基礎研究から着手されました。

 前例もなく、半ば手探りに近い形で開始されたプロジェクトではありましたが、幸い、学内外の多方面にわたる協力・支援を得たことで、最初の一歩を踏み出すことができました。次年度に向けた課題としては、活動組織を見直してステップアップを図ること、研究面では健康支援科学領域における新しい研究の醸成という視点から組織的に研究を推進すること、対外的な情報発信基地としてのホームページの開設、新しい研修先の開拓を視野に入れた海外研修の強化、学外に向けた成果公開の一環として国際シンポジウムの企画開催などが挙げられました。


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