「生命の基本単位は細胞である」とはいうものの、私たちの体は細胞だけからできているのではありません。生体を構成する細胞が生存するための「場所」が必要だからです。ちょっと栗蒸し羊羹をイメージしてみて下さい。栗が羊羹に埋まっていますね(下の写真)。生体組織を栗蒸し羊羹に例えると、栗が細胞で、羊羹が細胞外マトリックスということになります。つまり、細胞外マトリックスとは、具体的には生体組織のうち細胞以外の部分を指すのです。

2. 細胞外マトリックスとは?



「栗蒸し羊羹」は細胞外マトリックスのモデル?

 ところで生体組織はその組織特有の硬さ、軟らかさ、弾力などをもっています。たとえば私はヤキトリ屋さんが大好きなのですが、ヤキトリの「皮」、「軟骨」、「レバー」など、口に入れて噛んだときの歯ごたえはそれぞれ違います。各組織には固有の細胞があるのですが、こういった組織の物性は細胞そのものの物性によるものではなく、これらの細胞が作り出している細胞外マトリックスの違いによるのです。栗蒸し羊羹に例えると、一般的には栗がまばらで羊羹部分の多い栗蒸し羊羹(安い栗蒸し羊羹?)は、硬さや弾力を示します。「皮」とか「軟骨」ですね。また逆に栗がいっぱいで羊羹部分の少ない栗蒸し羊羹(高級な栗蒸し羊羹?)は軟らかい、たとえば「レバー」です。さらに、羊羹にも抹茶羊羹、梅羊羹、小豆羊羹、黒砂糖羊羹などの種類があるように、生体の各組織においても羊羹部分、すなわち細胞外マトリックスの成分が異なっているのです。ざっと、こんなイメージですね(笑)。


 ちょっと前までは、細胞外マトリックスは単なる構造体、基質成分としてしか認識されていませんでした。しかし、ここ20年くらいの間に細胞外マトリックスの成分解析が進み、それらの構造や機能の解明にむけた研究が行われてきた結果、細胞外マトリックスは単なる構造体としてばかりでなく、細胞に直接働きかけ、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能をも有していることが明らかになってきました。


 400種類に上ると推定されている細胞外マトリックス成分ですが、主なものはコラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、ラミニンなどの構造タンパク質と、プロテオグリカン、ヒアルロン酸などの複合多糖に大別することができます。ほとんどの成分の構造については分子レベル、あるいは遺伝子レベルで解明が進んでいますが、それぞれの機能や代謝調節については不明な点が多く、世界中の研究者がその解明に向けて研究を進めています。